ヘビーローテーション

人生のある時期において、それはもう狂ったように繰り返し繰り返し聴いた音楽たち。
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Yesterday
Hey Jude
Yellow Submarine / The Beatles

5歳からピアノを始め、小学校4年生から吹奏楽を始めたので、日常は音楽に溢れていた。それでも「音楽を聴くという行為」を習慣として得たのは中学生時代である。ポータブルMDプレーヤーを親に買い与えてもらったのが入り口だ。何を聴いたら良いのか解らなかったので、人類の多くがそうであるように、取り敢えずビートルズから入った。もはや彼らの音楽はロックではなく古典である。しかし厨二男子の心には実に新鮮な体験として響いた。
中でも特に何度も何度も聴いたのがこの3曲だ。いまでも、曲の断片を聴くだけで続きを口ずさんでしまう。

Rhapsody in Blue / George Gershwin

初めて『ファンタジア2000』を観て、この曲と出会った時の衝撃は言い表しようがない。いまでもこの曲を聴くとあの傑作アニメーションが脳内再生される。もちろん、音楽だけを切り取ってみても、シンフォニック・ジャズという前代未聞且つ不朽の芸術である。

ALL STANDARD IS YOU
サバイバル
電気イルカ奇妙ナ嗜好 / GLAY

GLAYを聴くと中学/高校時代を思い出す。今や死語なのかも知れないが、中学時代の吹奏楽部の同期に「バンギャ」がいて、その子らの勧めでGLAYを聴くようになった。ビートルズが “beetle” + “beat” でBeatlesであるように、灰色を表すgrayのRをLに「敢えて」間違えて "GLAY" と命名している。GLAYはビートルズから多大な影響を受けており、それは音楽性においても同じである。そんなわけで、ビートルズ漬けだった自分はGLAYの音楽に違和感なく入っていった。

Killer Queen
Bohemian Rhapsody
Seven Seas Of Rhye / Queen

本題から逸れるが、中学時代の自分は音楽以外にもうひとつ、インターネットとの出会いという人生の転機を迎えていた。そこで知り合った友人(彼とはいまでもFacebookで繋がっている)に勧められたのがQueenだった。
勧められたというよりも、厳密に言えば当時の彼は「ビートルズ?GLAY?ハッ。ダサいね。Queenを聴いてみろよ。」みたいな感じだった。その思惑は見事に的中し、多重録音による重厚なサウンドとピアノを多く取り入れた楽曲たちは自分の心を掴んで離さなかった。

スケルツォ第2番作品31
バラード第1番ト短調作品23
即興曲第4番嬰ハ短調作品66『幻想即興曲』 / Frederic Chopin
ピアノソナタ第14番『月光』 / Ludwig van Beethoven

高校生活を通して本当に狂ったように聴き続けたピアノ楽曲たちだ。ただの公立高校に入学したのだが、偶然ピアノがびっくりするくらい上手い同期が数人いた。余談だが彼らは揃いも揃ってイケメンだった。 バラード1番は吹奏楽部の先輩が得意だった記憶がある。自分も負けじとショパンやドビュッシーを練習したので、この時期は幼少期から続けてきたピアノのレッスンにおいて爆発的にレパートリーが増えた。映画『戦場のピアニスト』を初めて観たのもこの時だ。
ちなみに、この頃にはMDウォークマンからiPodへとデバイスも変わっていた。

The Seventh Night of July -TANABATA- / 酒井格
組曲『プスタ』 / Jan Van der Roost

どちらも代表的な吹奏楽曲であり、コンクール等で演奏される機会も多い。ピアノはほぼ趣味であったが、同時にバリバリの吹奏楽部員だったので、この2曲は特に聴いた。たなばたのトランペット1stなんか、いまでも楽譜が頭に入っているかもしれない。

トランペット協奏曲第1番変ホ長調 / Joseph Haydn

ベタベタな吹奏楽部員だったので、ソロコンにも出た。結果は散々だったが、当時演奏したハイドンのトランペット協奏曲は人生において聴いた/弾いた回数共にトップクラスである。

アラベスク第一番
「ベルガマスク組曲」より第3曲『月の光』 / Claude Debussy
パガニーニによる大練習曲(S.140-3)『ラ・カンパネラ』 / Franz Liszt

時期としては上記のショパン、ベートーヴェンと被っているが、ドビュッシーとリストについてはフジ子・ヘミング氏の演奏によるものが特に好きだった。聴く/弾くレパートリーとは別に、「好きな演奏家」としてフジ子氏のCDを何枚も買い漁った覚えがある。

ここでキスして。
丸の内サディスティック / 椎名林檎

吹奏楽部員が何故か理数系クラスに進級し、顧問の勧めで音大を受験する、という行き当たりバッタリな高校生活を送った結果、見事に浪人生へとジョブチェンジする。それまで地元を一歩も出たことのなかった田舎者が、そこそこ都会な隣町の代々木ゼミナールに通うこととなるのだが、その街の中古CD屋で「無罪モラトリアム」と出会う。この素晴らし過ぎるアルバムはセオリー通りに浪人生のハートを直撃し、以後浪人生活の1年間、狂ったように繰り返し聴かれるのだった(ちなみに、この年に椎名林檎は東京事変の2ndアルバム「大人」を発表する)。

浪人中は、受験勉強も一応しつつ、ピアノばっかり弾いていた。上記のショパン、ドビュッシー系のレパートリーに、一曲だけ「丸の内サディスティックのピアノパート」が加わった。余談だが、長らく自己紹介として使っている「だらだらとピアノを弾いて過ごす」というフレーズが生まれたのもこの時期だ。

交響曲第5番 / Peter Ilyich Tchaikovsky

元吹奏楽部員の浪人生は日東駒専の某私大に滑り込み、ある偶然からオーケストラサークルに所属する。生まれて初めて出会う交響曲、シンフォニー、そこで衝撃を受けたのがチャイコフスキーの5番である(但し旋律自体は小学校時代の吹奏楽曲で既に演奏して知っていた)。オーケストラの世界は奥が深く、それまで自分が吹奏楽とピアノで出会った様々な音楽の「元ネタ」と再会した。その日々は実に濃密で、以後人生で最も充実した5年間を過ごすこととなる。
基本的に、演奏会シーズン毎に自分が乗る曲を(演奏技術向上の目的も兼ねて)聴くことが多くなるのだが、乗り番に関係なく好きで聴く曲というのがある。自分は「マラ1」「ベト5」「どぼっぱ」、そして「チャイ5」を聴くことが圧倒的に多かった。

好きな交響曲について語ったエントリーは以前執筆しているので、今回は割愛する。
交響曲ベストナイン - epytoerets

ボレロ / Maurice Ravel

もともとこの曲自体は吹奏楽版なども含め知っていたのだが、オーケストラをやるようになってから「同曲異演奏の収集」という楽しみ方を知る。特にソロ回しの数の多さから、この曲は同曲異演奏の比較が面白い。同時に、演奏開始から数分は弦楽器がpizzのみで、3周目から漸くarco.になるというのが如何に特異なことかを改めて認識する。

これまで挙げてきた曲は、基本的に最初に聴いたときに凄まじい衝撃を受けて好きになっていた。ボレロは自分の演奏環境、所属するジャンルが変わったことで、既に何度も聴いたことがあったはずの曲を後から大好きになった。これまでにないことだったが、某よしお先輩から「そういうのを “スルメ曲” っていうんだよ」と教わった。

Decisive Battle
Both Of You Dance Like You Want To Win! / 鷺巣詩郎

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』が公開されたことで、改めて鷺巣詩郎氏の音楽の良さを認識する。この頃にはiPodがiPhoneになっており、CDを持っていなくともYouTube等で音楽を聴くことが出来たという環境の変化も垣間見られる。

ピアノ協奏曲第1番 / Frederic Chopin
ピアノ協奏曲第5番『皇帝』 / Ludwig van Beethoven

またもショパンとベートーヴェンである。交響曲と同時に、ピアノ協奏曲の魅力にも取り憑かれ、特に好きになったのはこの2曲だ。ベートーヴェンの皇帝は自分の葬式で流してほしいくらい好きだ。

意識
浴室
迷彩
パパイヤマンゴー / 椎名林檎 × 斎藤ネコ

ボレロと同じく、オーケストラをやるようになって後から好きになった「スルメ曲」たちである。アルバム発表当初は「なんだこの管弦楽は、椎名林檎の良さを殺しているじゃあないか。」というのが自分の印象だったのだが、自分がオケの世界を知っていくと共に聴く機会が増えていき、気付けばiPhoneのプレイリストの中では再生回数トップクラスとなっている。
アルバム「平成風俗」は全体を通して素晴らしい完成度を誇っているが、自分は特にこの4曲の並びの部分が大好きだ。なので、この4曲を続けて聴くことが多い。

交響曲第9番「合唱付き」 / Ludwig van Beethoven

時は流れ、大学3年生になった自分はサークルでトランペットを吹きつつ指揮者になっていた。その年、大学は創立130年を迎えており、オフィシャルな所謂「お抱え」のオーケストラである自分たちには絶対に第九を演奏しなければならない大人の事情があった。世間知らずな自分たちは歯向かっていたが、ただの大学生たちが大人の事情に勝てるはずなどないのだ。選曲という形式こそ踏襲したものの、全ては出来レースであり、第九を演奏するということは始めから決まっていて、仕組まれていた。それがこの曲との最初の出会いである。

第九を演奏したという経験は善くも悪くもこの人生における一大事であり、生涯を語る上で無視できない存在となってしまっただろう。このブログにもその片鱗は残されており、精一杯奮闘し指揮棒を振り切り覚悟を決めコバケン先生と出会い、そして本番に臨む自分たちのあの遠い日々は、しかし、まるで昨日のことのように思い出すことが出来る。

本当にこの曲だけは(1回聴くと1時間近くかかるのに)、何度聴いたか分からない。それでも、いまでも無性に聴きたくなるときがある。文句なしに世界で最も好きな曲だ。愛すべき芸術の真骨頂である。

BIONIC CHERRY / ももいろクローバーZ

サラリーマンとなったある日、YouTubeで衝撃的な(いま思えば違法にアップロードされた)動画に出会った。囚人服のような衣装に身を包んだ女の子が5人で汗だくになりながらライブハウスで歌って踊る動画だった。その歌詞に、自分は何か凄まじいものが込み上げてくるのを感じ、久しぶりに楽器を演奏するべくピアノを購入してしまうのだった。動画は2012年に行われた「モーレツ☆大航海ツアー 2012」というライブのものであり、BIONIC CHERRYという曲を、ももいろクローバーZというアイドルがパフォーマンスしているものだった。恥ずかしいことに、良い歳してアイドルを好きになってしまった。
彼女たちの曲やライブパフォーマンスはどれも魅力的だが、この時のBIONIC CHERRYの衝撃を超えるものは未だない。