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(タイトルなし)

この文章は2013年12月11日にFacebookに投稿したものを、意図的に時期を空けてからブログに再投稿しています。

(一)

数回のクリックで品物が家に届くのは本当に便利だ。その「買い物」は、ものの1分程度で終わってしまう。科学の力ってすげえ。

店に足を運んで商品を選び、会話をし、そして買って帰ると1時間はかかる。たぶんクリック数回の何十倍もの時間がかかっている。でも、その買い物の時間には何か素敵なことが起こっているはずだ。安心感と信頼があるはずだ。そして時には友情、時には遊び心があるはずだ。流行の言葉で言うなら、人と人の間に絆があるはずだ。そうでなきゃあならない。

「店に足を運んで買い物をする」ということが如何に素晴らしいことか。その素晴らしさは語り尽くせないし、言葉だけで表現できるものではない。フラッと立ち寄った人、こんな場所にくる予定じゃあなかったんだけどって人、暇潰しの人、道に迷って偶然ここに来てしまっただけの人、電車の乗り換えの通り道にしているだけの人、そういう人たちにこそ、いまこの瞬間、この店にいるということが、買い物をすることが、どんなに素晴らしいことなのかを伝えたい。

「ただ買い物をしてるだけ」だって?とんでもない。あなた、いま、この瞬間、ものすごくステキなことをしているんですよ、そう伝えたい。それを表現できるような流儀と作法と技術と知識と、人間味を忘れずに仕事がしたい。

(二)

現実は時に醜悪だ。でも自分たちが売り物にしているのも、その「現実」だ。クリック数回の間だけでは絶対に顔を覗かせることのないリアルだ。

一日に何度も目にする笑顔と、何度も耳にする感謝の言葉、それはかけがえのないものだ。少し大げさな言い方をすると、命を懸ける価値がある。誇りを持って、買い物をする人々の笑顔と感謝の気持ちに命を懸けて守らなきゃあならない。それがこの仕事で守るべき領分だ。

ドヤされない為とか、怒られない為とか、身内の評価を下げない為とか、そういう理由で仕事をしていた時期が自分にもあった。でも、もうそんなのうんざりだ。心底くだらない動機だと思う。そういう人間の仕事は、くだらない仕事になってしまう。

自分は笑顔と感謝の言葉の為に、この仕事をしているはずだ。その為に仕事がしたい。そして、その為に仕事をしているんだ、と胸を張って言える人間でなくてはならない。

(三)

学生オケをやっていた頃の演奏会と同じだと思う。

聴衆(観客)にとって、奏者の事情なんて知る由もない。学生だから勉強が大変だったとか、卒論がギリギリだったとか、家庭の事情でお金がないからバイトばっかりしてたとか、難曲だったとか、楽器が直前に壊れてスペアで本番に臨んでいるとか、直前に高熱を出したんだとか、1ヶ月前に曲目を変更して練習時間がなかったんだとか、流行病で合宿所が使えなくなってリハーサルが出来なかったとか、ソリストの交代があったとか、そんなのは知らない。
純粋に本番の演奏を聴いて、音楽を楽しみ、どこのオケは良かった、どこのオケは今年はダメだな、と評価する。ただそれだけ。

商売も一緒だ。どの商品を売るとどうだとか、人事異動があって人手が足りてないんだとか、入荷が遅れてどうだとか、仕入れ先に連絡がつくのが何日後だとか、急な新商品発表だったから商品知識の勉強する時間がありませんでしたとか、何を何日まで何個売らなきゃあならないだとか、そんなの、買い物をする人々は知らない。正確に言うと、「知らない」ではなくて、自分たちはそういう事情を理解し、目的も遂行した上で(それを乗り越えた上で)、人々の笑顔を守らなきゃあならない。

昨日配属されたばかりだろうが、ここで10年以上やっていようが、この場所に立っている人間は「プロ」だ。

(終)

数行だけ書くつもりが、なんか長くなったけど、そんな感じ。

成長しなきゃいけないこともまだまだたくさんあるのに、絶対に忘れてはならないことさえ、忘れかけている。成長しなきゃあダメだし、初心も忘れちゃあダメだ。ちょっと本気で、そう思った。

賞与をいただいた。この額をもらうだけの笑顔を自分は生んでいるだろうか。仮に「私はボーナスを幾らもらいました」という名札とかタスキがあって、職場でそれを身につけたとして(有り得ない喩えだけど)、自分から品物を買ってくれる人々はその額に納得するだろうか。自分はそれだけの働きをしているんだろうか。

元から今回は貯金するつもりだったけど、いろいろ考えていたら「ボーナスで自分にご褒美」なんて甘いこと言っていられないように思ったので、1円残さず貯金することにした。別に、今日職場で飛んでもないことをやらかしたとか、怒られたとか(また始末書を書いたとか)、そういうわけじゃあないです。帰り道にぐるぐると考えていたことを文章にしただけ。