恥知らずのパープルヘイズを読んだよ

※超絶ネタバレ

恥知らずのパープルヘイズ ?ジョジョの奇妙な冒険より?

恥知らずのパープルヘイズ ?ジョジョの奇妙な冒険より?


特に原作レイプということもなく、なかなか良かったです。

  • 実にシンプルな「勇気」というのがテーマになっていて、5部で主人公パーティから離脱したフーゴは「一歩を踏み出せないでいる者」という位置づけ。
  • 原作の「トリッシュはオレなんだ!」の場面のナランチャと対比させ、彼はフーゴとは逆に一歩を踏み出した者という位置づけになっている。このときの台詞と行動の意味がフーゴにはどうしても理解できずにいた。その意味を追求することでフーゴが本当の「勇気」とは何たるかを知って成長していくという構成になっています。
  • 従って様々な解釈が可能な原作5部のこの名シーンに対して本作なりに一つの解釈を提示しており、読者は半ばそれを強制された上で読むこととなります。
  • フーゴが過去に決着をつける話と捉えることもできる。そういう意味では原作でディアボロを描くときにテーマになっていた「過去の因縁との決別」とも微妙に対比させているっぽい。フーゴが選ぶ道は決別ではなく、過去を受け入れる勇気でした。
  • 一方で歴代ジョジョのテーマである「運命に立ち向かう」という話をするキャラがいない。ギャングの話だし、そもそも運命なんて無かった人たちの物語。だいぶ暗いです。敵キャラに感情移入しちゃあダメです。
  • あれこれ苦悩する場面が多いので、原作よりも少し頼り無さげな印象を受けるフーゴです。
  • 本作はフーゴという人物像を「常に間違いをしないように、正しい方を(無難な方を)選択して生きてきた優等生」という解釈で捉えた結果でもあります。従って彼の行動原理は後悔などではなく「自分の選択が正しかったのかどうかという疑問」です。どうしてナランチャブチャラティを追うことができたのに、自分にはできなかったのか。「できなかった」と考えるいうことは自分は本当はブチャラティについて行きたいと願っていたのではないか?…というところから、遂にある答えを導き出します。
  • 荒木先生に「能力が凶悪かつ使いどころが難しすぎた」と言われ、フーゴ離脱の本当の理由となってしまったパープルヘイズは、やはりどう考えても主人公向きの能力ではない。本作でも作者は相当苦労したのでは…。そしてフーゴはこのパープルヘイズの醜悪で知性の欠片もない姿が好きではなく、あまりちゃんとその姿を見たことがないという設定が。
  • お約束となった通り一遍のスタンド能力紹介。本作では「もうひとりのフーゴ自身」というのをやたら強調していることから分かる様に、パープルヘイズの能力と向き合うこと(=フーゴが自分自身とちゃんと向き合うこと)が成長のカギとなる。
  • この辺をジョジョの既存の設定である「スタンド能力の成長」と上手く掛け合わせて表現したところには素直に感動した。
  • 物語自体は5部の半年後が舞台になっていて、ぶっちゃけ本編の続きを荒木飛呂彦の代わりに書いたと言っても過言ではないくらい、本編と密接に関わる内容。従ってジョルノ、ミスタ、トリッシュ、ポルナレフ登場。ブチャラティアバッキオナランチャも回想シーンにバンバン登場。基本的にこいつらは過去の設定が原作でしっかり描かれているので特に矛盾点なんかもなく、セリフなんかも原作のイメージ通りで違和感がないので、すっきり読める。
  • 回想シーンが多く、原作5部に登場するシーンをそのまま文字に起こしたような場面が多い。原作ファンには堪らないのだが、こうした場面に対してもまた本作のフーゴ目線で独自の解釈なんかも加わっているので、人によって好き嫌いが別れるかもしれない。自分にはなかなか面白かった。
  • 4部に登場する某登場人物の重要な過去が明らかになる(どう考えても後付け設定)。話としては筋が通っている上にタイミング的にも素晴らしく、4部好きには堪らないのだが、そういうのが嫌いな人もいそう。いやあ兎に角意外だった。思わずニヤリ。一応、公式設定なんだよな…??
  • スタンドのルールがひとつ追加されてた。思わず納得してしまうようなやつ。これも追加というよりこの作品独自の解釈かも知れない。その際に「杜王町」などのキーワードが登場し、ニヤリ。
  • 2部や3部のセリフへのオマージュ
  • ジョルノがトップになってからのパッショーネの力が絶大で、SW財団まで(従わせるような形で)協力させている
  • ジョルノがやや神格化され過ぎている。6部の回想に登場するDIOあたりを意識している印象が。次いでミスタも。フーゴ以外のパッショーネのキャラはみんな揃って「ジョルノ様」「ミスタ様」。
  • その模様は3部でDIOに心酔する部下たちをやや彷彿とさせる。
  • 成長したフーゴが最後に手に入れる能力「パープル・ヘイズ・ディストーション」。…が、その能力はわけがわからないwwww