アップ、基礎練、そしてシンフォニーの練習をする。
…のだが、実はその先にもうひとつ、基礎練の壁がある。
頭を使い、身体をできるだけ使わない発音。脱力。
シンフォニーの練習のはずが、何度も基礎練に戻ってゆく。
その作業的な段階が、確実な意味を持つと思う。
殊にベートーヴェン、特に第九に関して。
その壁を削るプロセス。
351教室の、6階の、左側の通路。
ここは、俺にとっての、精神と時の部屋である。
適度に他の団員の音と距離を保ち、モチベーションを絶やさず、
己の「基礎力」にフォーカスする最高の場所である。