統括の総括

毎年書くが、やはり専フィルはトレーナー陣に本当に恵まれている。そして恵まれているというだけでなくどんどん自分たちからその世界に飛び込んで行こうとしている。そういった仲間の姿にもっと刺激されて欲しいものである。あっという間であったが、良き合宿であった。

団員ひとり一人、それぞれが己の達すべき目標、守るべき領分、克服すべき課題を見付けて帰ってきた。そして、愛する音楽の真髄にまたひとつ近付いたはずである。

我々はいま、難題を抱えているが、その難題とは愛すべき芸術の真骨頂でもある。

第九。

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは様々な葛藤と苦難、そしてそれを乗り越え克服する人類の歓喜を描いている。そして我々、オーケストラの団員も日々努力し、葛藤し、苦しみながら確実に成長しているはずである。偉人はどんな心を持っていただろう。その心は、天国から我々の演奏を聴いているだろうか。

実は合宿から帰り、これまでのメーリングリストのメール全てに目を通す機会があった。オーケストラ入団当初は、係分担を決める、先輩にこんなことを注意された、こんな時はどうすればいいのか、なんて内容のメールばかりだ。やがては四役を決めようだとか、ホールを決めようだとか、後輩のこんなことは注意しなければ、なんて内容が増えてくる。遂に運営を統括するようになり、合奏の連絡や団員への通達事項ばかりになってくる。

そして、第九である。我々は第九を演奏する機会を得るまで何度も葛藤し、ぶつかり合い、何度も力なさと挫折を味わった。その断片がメーリングリストに記録されているわけである。第九を演奏する事に躊躇する者、代案を考える者、強攻策を考える者、そして意見がまとまらずに焦る者、迷走する我々の姿が思い出されるわけだ。

あまり良い思い出ではないと言う者もいるが、あの葛藤と苦悶の日々があったからこそ、いま我々は全力と全身全霊を捧げる覚悟を決める事が出来たのだと思う。あの頃を振り返って考えると、もう後は前に進むのみだという事が分かる。

我々の2年半の歳月は、まさに、いまこの時の為にあったのである。
来るべき日に向け、もう一度覚悟を決めようと思う。

本当に、あっという間であったが、良き合宿であった。