ヱヴァQで流れる第九の4楽章330小節目がヤバイことになっていた

QのDVDを買ったらサントラが付いてきました。
初回限定版特典らしい。
サントラが付いてくるなんて全然知らなかったのでパッケージを開けた瞬間に狂喜乱舞しました。
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第九も入っている

Qでは第九が流れるので、サントラにも第九が入っています。
第九を演奏した事がある者としてはどうしても特別な思い入れを感じてしまいます。

映画館では普通に、おお第九だ!と思いながら聴いていました。
正確には映像とセリフの情報量が多すぎて「聴いて」いられる状況じゃあなかったんですけどね。

フォースインパクトが始まり、エヴァ改2号機、8号機、Mark.09(アダムスの器?)、Mark.06(第12の使徒?)、第13号機、AAAヴンダーまでやって来て凄まじく入り乱れた戦闘が繰り広げられます。

そうした中、いつの間にか第九は終わっていて、
" The Wrath of god, in All its Fury "
という予告映像でも使われた非常にカッコイイ曲が流れています。
題を直訳すると「神の憤り、激怒」といったところでしょうか。*1

映画館に2度観に行ったにもかかわらず、どのタイミングでこの2曲が入れ替わっているのか全く気付きませんでした。

2曲は繋がっていた

サントラを聴いてみて驚愕しました。

  • トラック29に第九
  • トラック30に"The Wrath of god, in All its Fury"

が収録されているのですが、第九の330小節目だけはトラック30に入っているようです
このサントラ、曲と曲の間が不自然なほど極端に空いているのに対し、このトラック29と30の間だけは完全に意図的に繋げられています。

本来ならば、第九の4楽章は330小節目の "Gott!!(神)" の歌詞で一旦コーラスが終了し、オーケストラによる6/8拍子の長い間奏に入ります。
そして間奏を抜けた部分が超有名な歓喜の歌の大合唱です。
試しにトラック30だけを再生するとはっきり分かるのですが、第九の330小節目の "Gott!!" が一瞬だけ聴こえ、それをぶった切って、"The Wrath of god, in All its Fury"が始まります。

歓喜の歌について

そもそも第九とはどんな曲なのか。
これは自分が第九を演奏した時期に書きまくったことなのですが、第九の有名な「歓喜の歌」は、ただ単に喜びを表現しただけの曲ではありません。

かなり乱暴に説明すると、第4楽章はこんな構成です。

  • 第4楽章の旋律が提示される
  • 第1楽章で使われた旋律が再現される→第4楽章の旋律でぶった切られる
  • 第2楽章で使われた旋律が再現される→第4楽章の旋律でぶった切られる
  • 第3楽章で使われた旋律が再現される→第4楽章の旋律でぶった切られる
  • 第4楽章の旋律もバリトンソロでぶった切られる
  • 歓喜の歌の大合唱

重要なのは、ある旋律を別の旋律でぶった切る「否定」の手法です。
ベートーヴェンは第1楽章から第3楽章までに描いた様々な葛藤と苦難の旋律を否定することで、それらを乗り越え克服する人類の歓喜を描きました。

否定される人類の歓喜

TVアニメ版の第九は有名な歓喜の歌の大合唱の部分(第4楽章543小節目=練習番号M)まで使われているのに対し、Qで流れる第九はもっと手前の部分で、バリトンソロに歓喜の歌の旋律が現れるAllegro assaiの部分(237小節目)から始まり、オーケストラの間奏が始まる直前(330小節目)までが使われています。

Qでは「歓喜の歌の大合唱」は使われていないのです。
歓喜の歌の合唱に達する前に"The Wrath of god, in All its Fury"にぶった切られてしまいます。

説明が長くなりましたが、要するに否定の手法の末に登場するはずの歓喜の歌は
" The Wrath of god, in All its Fury(神の憤り、激怒)"
によって、また更に否定されています。

TVアニメ版では24話に登場する音楽がカヲルの鼻歌を含めて全て第九に統一されていたり、第九は第九として強調されていました。第九がそのままの意味を持っていたとも言えます。
Qでの第九は否定される対象として提示されているのかも知れません。そうなると全く逆の意味を持つことになります。つまり第九によって描かれるのは「人類の歓喜の否定」なのです。

謎の多いフォースインパクトの意味を考察できそうな気がします。
続編が楽しみですね。

追伸

久しぶりにスコアを引っ張り出して来た。
懐かしいので、スコアを眺めながらサントラを聴き直してみると更に驚愕。
Qの第九はホルンが楽譜と全然違うことを演奏している!!

版の違いだろうか?
サントラとスコアが手元にある人は聴いてみて下さい。

↑更なる追記 2014.09.07

この第九は

  • Hr. 6本
  • Tp. 4本
  • Trb. 4本
  • Tub. 2本

というトンデモ編成で録音されており、鷺巣詩郎さんと天野正道さんによるアレンジが付加されているそうです。
鷺巣詩郎さんの公式サイト内Infoページにて詳しい楽曲解説が読めます。
実に興味深いので、是非ご一読されたい。

*1:"The Wrath of god" で「神罰」という意味だそうです。