「3月11日のマーラー」を観たよ

NHK総合で、3.11ハーディング指揮定期演奏会 特別番組放送 : 新日本フィルハーモニー交響楽団 New Japan Philharmonic

良い番組だったと思う。こういう状況で演奏会を開催することについて、不謹慎云々、危機管理云々、批判的な向きもあるだろうが、いまはそうした話をするつもりは一切ないし、他人と議論を交わすつもりも一切ない。1年前のあの日、各々「ベスト」な対応は他にあったのかも知れないし、それとは掛け離れた行動をとってしまった人も多かろう。しかし、そうした人たちの選択の是非を問うことや、その選択を責めることは、いまとなっては本当にくだらない行為なのだ。

自分は、ただただ、その音楽に興味があったので観た。

誤解を恐れずに書くならば、そもそも常日頃から(そしてあの日のような状況下でも変わることなく)、合理的に「ベスト」な行動を考え、機械的にその行動を選択するようなタイプの人間が音楽に馴染むだろうとは到底思えない。これは音楽を愛する人たちに対する皮肉でも揶揄でもなければ、卑下しているわけでもない。

ドラえもんのしずかちゃんのこんなセリフがある。
「ときどき理屈に合わないことするのが人間なのよ」
つまり音楽とはそういうものなのだ。

日頃の練習とか、考えるべき奏法とか、そうした努力を蔑ろにして構わないとは思わない。しかし音楽の根源的な部分というのはそうした「理屈に合わない」ところから湧き上がるものであるはずだ。震災当日、プロの奏者たちからはどんな音楽が湧き上がったのだろう。あの日に演奏されたマーラーの、ほんの一部しか番組では紹介されていなかったが、音楽の根源的な部分、その片鱗が表れていたように感じた。