版権ビジネスと小売業界について考える

「この商品がポケモンを使う意味を求めたいんだ」

尊敬するクリエイター(←敢えてこの呼び方をする)はたくさんいますが、株式会社ポケモンの代表取締役社長、石原恒和さんもその一人です。タイトルは、そんな石原さんの言葉。

こんなエピソードがある。『赤・緑』がヒットした当時、同時に派生商品もたくさん生まれた。その監修をしなきゃならんので、いわゆる「版権会議」を週に1回くらいのペースでやっていた。この会議のスゴイところは、毎週毎週、会議室の机に乗り切らないくらい上がってくるライセンス商品のひとつひとつをみて、単に「これはOK」「これはNG」と決めるだけではなく、その場で商品に対してアイディアを出してみたり、ここはもっとこうするべきみたいな具体的なコメントをしたり…石原さんはそんなことを絶えずやっていたらしい。

「この商品がポケモンを使う意味を求めたいんだ」という言葉。既にある商品に、ただ後からペタッとポケモンのイラストを貼付けただけみたいなものにライセンスを与えるのは違うというわけだ。それってクリエイター精神を貫いているというか、簡単な様で実はものすごいこだわりなんだろうな、と思う。要するに、石原さんはポケモンが幾ら普及していっても(言い換えれば「金を産む」コンテンツに成っていっても)、それを「商品」としてではなく「作品」としてずっと育てているんだなと。だからこそポケモンという作品は終わらずに10年以上続いているのだろうと思う。

…なんでこんなことをいきなり書いたかというと、そういう考え方ってクリエイティヴな精神の上にしか成立しないじゃあないですか。あるフィールドが商業主義に支配され始めると、あっという間にそういった精神は淘汰されてしまう。それがどうしようもなく残念に感じることがある。

アイドル産業を考える*1

時事ネタ。暮れに向けて、おせちとか、お歳暮とかの商戦が始まっています。どれも気合い入れて販促しているわけですが、特にクリスマスケーキがスゴイ。

昨年に引き続きAKB48がメインキャラクターに登用されています。

昨年好評だったので、味をしめて今年もやりますというパターン。ケーキを買うと、CDが貰えたり、抽選でポスターが当たったり、いろいろ特典があります。アイドルファンを中心に、予約殺到しているらしい。なんだかなあ。

カタログの後ろの方はAKBずくめ。

俺「ケーキのカタログなのか、アイドルの写真集なのか分かりませんwww」
オーナー「ああ。これじゃ何売ってんのか分からなくなるよなあwww」

なんて会話をしてしまうくらい。

実際、この場合はどこまでが「商品」なのだろう。お店では何を売っているのだろう。CDが握手権のオマケに成り下がった様に、やがて数年後にはクリスマスケーキもアイドルのポスターのオマケになっているんだろうか。

そういう目線で考えると、小売業界に於いてプロモーションにアイドルビジネスを絡めるというのは恐ろしい選択であるように思える。あらゆる商品が「アイドルのオマケ」に成っていく危険性を持っているからだ。
(小売業に携わる人間として、「商品自体の価値」と「付加価値」と「プロモーション」の関係について考えさせられることは多々あるが、それはまたの機会に書くことにする。)

もちろん、商品によっては面白いコンセプトをしているものもあります。
↓これとか結構考えてあるんだなあと感心したり。

この商品がAKB48を使う意味、そこに何が求められているのかは割とはっきりしている。そういう意識が完全に「死んで」いないのもまた事実だし。

オマケ

本題から逸れますが。

大山シェフ監修、あまおうのケーキ。10,000円。

こちらも予約殺到しているらしい。いやいやいやいや。10kて。食べるとき8等分すると考えて、一切れ1,250円ですよ。自分なら、その金で他に何が買えるかを考えてしまう。

どんな味がするんでしょう。
お財布に余裕がある方は買ってみては?

*1:以前書いた記事:『前田敦子はチャイコフスキーになれるか』 id:epytoerets:20110902:1314897493