心まで白く染められたなら

俺はデートが大嫌いだ。
彼女と一緒にいたいけど、それ以上は億劫だ。


暇だね、だとか、やることないね、って言うと
「なんてつまらない男なの。」ってことになる。
それが面倒で仕方がない。


部屋でゆっくりと一緒に過ごすだけでいい。
俺はだらだらとピアノを弾いている。
彼女はそれを聴いているんだか聴いていないんだか分からない。
漫画を読むなりパソコンやるなり、好きに過ごしている。
俺も疲れたら寝転がったり携帯いじったりして好きにする。
それが理想だ。


寝癖を直してお洒落な服を着て化粧をして香水つけて、
それでやっと会える人が一番近い人だとは俺は思わない。
寧ろ逆だろう。


前に付き合っていた彼女が、バレンタインの日に真っ黒焦げのケーキをくれたことがある。
みんなにあげようと思って作ったんだけど、失敗して真っ黒になっちゃった。こんなの、7じこにしかあげられない。たくさんあるけど、頑張って食べてね。
俺はそれを聞いて、なんてロマンチックな女なんだ、って思った。


デートなんかしなくても会えるのが恋人だと思う。
用事がなくても呼び出せるのが恋人だと思う。


ぴんぽーん。ガチャッ。なんだよ。いや別に、暇だから。あー俺も暇だわ。それにしてもやることないね。仕方ない、だらだらするか。取り敢えず部屋入っていい?俺うんこしてくるから、その辺の物、なんか食べてていいよ。
それが理想。


クリスマスだとか、誕生日だとか、面倒だ。
大嫌いだ。


俺にとっては、誕生日プレゼントを何にするかだとか、デートプランをどうするかだとか考えるのは、次の授業のプレゼンを考えるのと同じくらい億劫だ。
デートの日がやってくるのは、入学試験の日がやってくるのと同じくらい億劫だ。


今日って誕生日でしょ、ポッキーあげる。
そんな彼女が欲しい。


冗談じゃなくて本気だ。